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日常や呟き

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いいかげん

段々暖かくなってきたと思ったら、ここ2日ほど雨の所為か、寒いです。
ついでに会社は暖房かかっていなくてもPCのお陰で、暑いです(汗)

ま、残業しなくて済んだ分、らっき~ってことで。


連載SSの続きはこの下です~。

月の誘い7


マリーアが慌てて整えたベッドに銀次はそっと蛮を横たえた。
蛮の様子は、荒かった息も落ち着いて穏やかな寝息になっていて、二人を安心させた。
汗でじっとりと湿った服ではとマリーアが用意してくれた服に着替えさせ、そのついでに身体を拭いてやる。
気持ちいいのか、蛮は薄く微笑んで擦り寄る仕種までしてくれて、二人はその可愛らしさに声を忍ばせて笑いあったのだった。
「よく寝てるわね。無理して限界になるまで我慢したのね」
穏やかに眠る蛮の汗で張り付いた前髪を払うようにすれば、蛮はむずがる子供のようにもぞもぞと身じろいだ。手を離せば、直ぐに大人しく眠りに戻るようで、その様子に銀次は思わずくすりと笑みをこぼした。
「ふふっ、小さな子供みたいね。蛮ってば」
マリーアは面白がるように、蛮の頬を突付いたり額を撫でたりを繰り返した。その度に蛮はもそもそと動き、布団の中に埋もれてゆくのだ。
「蛮ちゃんってば、かわい~」
「ホントよね、いつもこうだと可愛いのにね」
本人が聞いていたら『男が可愛くてどーする!』と顔を赤くして反論してくるその様子までもが簡単に想像できてしまって、ますます二人は笑うのだった。

 

蛮が休むのに邪魔してばかりでは、とリビングに場所を移し、ばたばたしていた所為で遅くなった昼食を食べることにした。
「ごめんなさいね、簡単なものしか作れなくて‥」
「ううん。おいしそうだよ、いただきま~す!」
手早く作られた昼食の料理に済まなさそうに言うマリーアに銀次はそう返すと、早速とばかりに皿と取っ組合った。
山と盛られた皿が、見る見るうちに空になるさまは作った側としては嬉しいし気持ちがいいものだ。
「ほんと、銀ちゃんはいっぱい食べてくれて嬉しいわ。一緒にいた頃の蛮なんて食は細いし、好き嫌いはあるし、すご~く大変だったのよね」
「そうなんだ。今の蛮ちゃんは好き嫌いなんてなさそうに思うけど‥」
「ホントね。でも、それだけ苦労したって事なんでしょうね」
大体が8才の子供が裏で生きていくには、食べ物の好き嫌いなんて言っている余裕など無いだろう。如何に蛮の身体能力が優れていて、知識もあったとしても、やはり子供なのだ。見かけを補おうと心理的な駆け引きに持ち込んだとしても、それは圧倒的に経験がモノをいう。
人はどうあがいても自分の年齢以上の経験など持ち得ようも無いのだから。
ちらりと聞いた話だけでも、蛮が必死になって生きてきたことは分かる。それが、生きたいからと望んだ結果ではなくても、だ。
「蛮ちゃん、いっぱい制約ってあるんだね‥‥」
「そうね。あの子が望んだものではなくても、生まれついたその事だけで、既に制約がかけられてしまっているの」
「蛮ちゃんが、魔女だって事?」
「ええ、あの子が否定しても、その血を引いている事実があるし、またその能力も受け継いでいる。その為の制約はかけられてしまうわ」
例えば、蛮の右手。
蛮は普段は呪文の詠唱なしに『スネークバイト』を使う。が、呪文の詠唱を付加するだけで、その威力は数倍近くに跳ね上がる。
普通の人間にはそんなことは出来ない。これも蛮の受け継いだ『血』の効果だ。
魔力には当然のように、対価が必要だ。
「つまり、蛮ちゃんが呪文の詠唱をしたら、儀式が必要ってこと?」
「そうよ。神から力を借りるときの呪文には大抵、何かをささげるから、力を貸してくれ、って感じのものが多いわ。蛮の『蛇咬』もそうよ」
「え? でも蛮ちゃんの呪文にはそんな言葉、入ってな‥‥‥」
銀次の中で何かが引っかかった。
「そういえば昔に一度だけ使った、呪文って今使っているのと、違った気がするんだよね‥‥」
小さな声で呟くように囁かれた呪文。対峙していた二人の間に距離があったし、注意して聞いていたわけでもない。その後に蛮の身に起こったことのほうに注意がいってしまい、今まで気にしたことも無かった。
しきりに首をひねり考え込む銀次をマリーアは微笑んんで見つめていた。

 

「ん‥‥‥? ここ、は?」
目を開ければそこは見慣れたものではないが、懐かしい感じを伴う天井で、蛮は首を傾げた。
記憶を辿れば、そこがマリーアの家だと思い出し、懐かしいのもそうかと納得ができた。
「ちっとばっかし無理だったか‥」
身体を起こそうとしたが力が全くというほど入らず、諦めてため息を吐く。
儀式の時間を無理やり伸ばしたのは理由がある。
既に、蛮の記憶の無い時間の長さの存在が明確になりすぎていたからだ。それを、少しでも抑えようと思うのなら、、此処で少し無茶でも儀式の時間を長くするしかない。
誰に指摘されずとも、自身が一番自覚している事だ。
他者に意識をのっとられている。
記憶が無いのはその所為だろう。
銀次から聞いた話しで確信がもてた。今までははっきりとした確証が無かったのだ。蛮が蛮で無いことが分かる者に出会っていなかったのだから。
「は~、あんだけの時間、のっとられてるとするなら、今回一回きりじゃたんねぇだろうな」
そう考えればげんなりする。彼らだって蛮を死なせたいわけじゃないだろうから、ちゃんと止めてはくれる。尤も、限界が分かった上でかは蛮にも分からない。今回もぎりぎりだったことは確かだし。
「どれだけ懸かるんだろうな‥‥」
力ない声が零れた。

かちゃりと音を立ててドアが開いた。
「ん‥‥、銀、次?」
「‥‥、蛮ちゃん。気がついたんだ。大丈夫?」
「ああ、なんとか生きてる。っていっても身体に力が入らなくて起き上がることもできねぇけどな」
「お腹、空かない? 食べられそう?」
「ああ、腹減ったよ。今何時なんだ?」
蛮が首を巡らせれば、視界に入った窓の外は夕焼けの赤い色に染まっていた。
「もうすぐね、6時になるところ」
「って、俺は5時間近く寝てたのか」
銀次は手を貸して、蛮をベッドに起き上がらせてやる。
「うん。しっかり寝てた。マリーアさんが今日は泊まって行きなさいって」
「そか、それしかないよな。俺は運転できそうにないし」
ため息しか出ないとはこの事かもな、なんて思いながら蛮は銀次を見上げた。
「なんだ? 何か聞きたいことが、あるのか?」
「うん‥‥。蛮ちゃんの「ささげるモノ」って何? 聞いてもいい事? もし話したくないならそう言って」
「俺の気分的には、話したくねぇ事なんだがな」
「そう。じゃ、オレの考えを取り敢えず聞いてくれる?」
「言ってみろや」
蛮に促され、銀次はごくんと喉をならして唾を飲み込んだ。これから話すことがあっていたとしたら、自分に何が出来るのか。


「‥‥‥、って事がオレが考えたこと。マリーアさんは儀式って事しか教えてはくれなかったから」
「‥‥。おおむね、あってるかもな。まあ踊るってのも表現だけならつかうかもな」
表現だけということは、実際に蛮は踊るわけではないということだ。
「マリーアさんは俺が手伝える事だって言ってたけど、手伝うのは、蛮ちゃんが嫌なんだ?」
「ああ、どんな事をするのかって知ったら、お前だって嫌だって思うだろうよ」
そう言って蛮はふるりと身体を震わせた。
「蛮ちゃん、寒い?」
「いや、そういう、わけじゃ‥」
銀次は蛮に体温を分けるように、自分の胸に抱きこんだ。
身長の差はたいして無いし、肩幅だってあまり変わらない。なのに蛮の身体は華奢に見える。抱き込んでみても銀次の腕の中にすっぽりと納まってしまう。
蛮に抱き込まれても、微妙に銀次は収まりが悪かったりするのに、だ。
明らかに蛮の方が胸の厚みがないのだ。足や、二の腕とかも銀次よりは細い。
見かけだけでは、横柄な態度と生意気な口調、そして実際の年以上の知識と落ち着いた雰囲気。そういったものの総合で、蛮が小さく華奢に見えることは少ない。
大体が、銀次の昔の仲間(士度や花月)より蛮は小さいのだ。多分、蛮より小さいのはまだ幼いと言えるマクベスや翔くらいだろう。
「まだ、寒い?」
銀次が腕の中の蛮に聞けば、彼は首をふるふると振った。
「寒い、わけじゃ、ねぇよ。でも、ちっとだけ‥‥、このままで‥」
「いくらでも、蛮ちゃんはもっと甘えていいんだよ?」
珍しく素直に甘える蛮に銀次の頬は緩みっぱなしだった。
「あのねぇ~、お二人さん。お邪魔しちゃうのはと~~っても気が引けるんだけどぉ、蛮のご飯を持ってきたんだけどぉ?」
ドアのところからかけられたマリーアの声に、二人は我に返ると、蛮は銀次を押しのけるように腕に力を込めたのだった。
「銀ちゃんには甘えるのねぇ‥‥。お母さんは寂しいわぁ」
「誰が、お母さんじゃ! ババァ!」
「ま、ご飯いらないの? せっかく作ってきたのにぃ」
「あ‥、うそうそ。お母さんってより、キレーなお姉さまでしょう!」
「まあ、調子がいいんだから。さ、ゆっくりとたくさん食べてね」
マリーアは蛮の布団の上に、出したテーフルの上に持ってきた料理を置いた。
「おかわりはいくらでもあるからね」
「う~~~、これ、嫌いなのに‥‥」
「栄養満点なのは間違いないわよ? 早く、体力を回復させたいんでしょ?」
「ちぇっ‥‥」
ぶちぶちと文句をこぼしながらも蛮は料理に手をつけた。
今までの二人のやり取りを、銀次は声を殺して笑いながら聞いていたのだった。
「さ、銀ちゃん。あなたも食べるでしょう? 蛮が心配ならこっちに持ってきて一緒に食べなさいな」
「あ、うん。そうする」
銀次はいそいそとりリビングへと向かっていったのだった。

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可愛いvv

蛮ちゃんが素直なところがツボにはまりましたo(^-^)oなんか今日誕生日なので、嬉しいプレゼントをいただいたなぁってo(^-^)oけど…続きが気になる(-_-;)
  • from katty :
  • URL :
  • 2008/03/22 (08:26) :
  • Edit :
  • Res

Re:可愛いvv

そういえば、そうですね。ブログとかに書いてありましたね。おめでとうございます。
続きは打ち込みはしてるんですが。まあ、続きが気になるような位置で切るからよけいかもしれないですね。
蛮ちゃんが地下で何していたかと、銀次が蛮になんて言ったのかは今のところ想像にお任せいたします。妄想全開でも構いませんよ(←ポイントかも)

本日もコメントありがとうございます
  • from 神成 焔 :
  • 2008/03/23 (02:31)

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