日々こもごも

日常や呟き

[PR]

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

午前様‥

久々に、午前様ですよ。
明日も慌しいです。
それが終れば、ちょっと一息かな～。

ホント、今日は朝から慌しい。
朝、いつも起きる時間の一時間近く前に消防車のサイレンでたたき起こされました。
火事だって！（＠＠；）
小火ていどで済んだようですが、本当に近所！　近いから！
あ～、恐かった。
度々には会いたくない出来事です。

ってとこで、連載はこの下に～

月の誘い８

結局、マリーアの家に一週間の逗留になった。
理由は、蛮の体調だった。
流石に初めの日のように立てないほどのことはだんだん無くなったが、続いた所為か、最後あたりでは熱まで出る始末で、銀次、マリーアの二人を慌てさせたのだった。
銀次はあの後は、儀式にもぐりこもうとすることなく、その間の時間、マリーアの手伝いをして過ごしていた。

蛮の熱は昨日の夜には下がり、儀式も一段落したとかで、今日の昼過ぎには新宿に戻る予定になっている。

「蛮、いいこと、せめて簡略なのでもいいから、まめに儀式をしておきなさい。そうすれば、彼らだって無茶は言わないわ。」
「へ～へ～。時間があったらな」
マリーアの小言に蛮は耳も貸さない。
「も～、蛮ちゃんってば、心配させたんだから、ちゃんと聞いてよ」
「銀次までうるさい」
騒がしいやり取りをしつつ、帰るための準備をした。
といっても荷物があるわけじゃないから、いたって簡単なものだ。スバルのガラスの汚れを落とし、軽い整備を施しただけ。
なんせ一週間も野外に放置だったのだから、汚れるし、動かさなかったから、一応の整備、点検は必要だ。
その準備が終われば、後は新宿に向けて走るだけ。
「また、いつでもいらっしゃいな。お店の方でも構わないわよ」
「気がむいたらな」
「きっと行きます！　蛮ちゃんも引きずってでも！」
「まあ、銀ちゃん。頼もしいわぁ」
「アホ！　俺様が銀次ごときに引きずられてなんか行くものか」
「そんなの、わかんないじゃない！　蛮ちゃんのばかぁ」
「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは！」
「ばかだから、ばかじゃん。ちょっとくらい素直になんないと、罰があたるよ！」
「おー、当ててみやがれったんだ」
「まぁ、ケンカするほど仲がいいのね。お母さん、銀ちゃんがいるから、安心だわぁ」
「ババァは黙ってろ！」
「まぁ、口悪いんだから。も～、誰に似たのかしら」
「ババァに似たんだろ」
「そういう事言うのは、どの口かしら？」
マリーアは蛮の口の端を摘むようにもって引っ張った。
「いひぇひぇひぇひぇ、、ふぉのくちひゃ（いてててて、この口だ）」
「ほんと、口の減らない子ね。お母さんは心配だわ」
「うるさい、ほっとけ！」
「まあまあ、蛮ちゃん。また熱が上がるよ？」
「上げさせてるのは、そっちだろーが！」
「兎に角、新宿に帰るんでしょ？」
「あ、ああ。ったく。んじゃ、またな」
蛮は軽く手をあげ、銀次はぺこんとお辞儀をした。
「ホントにいつでもいらっしゃいな」
マリーアも明るい声で返して手を大きく振ったのだった。

「ち～す」
「こんにちは～」
いつもの挨拶でホンキートンクのドアを開けた。
「お前らか。暫く見なかったが、何か仕事入ったのか？　ツケ返せよ」
「ちげぇよ。仕事じゃねぇ。ヤボ用だ」
「蛮ちゃんがね、熱出して寝込んだんだ」
「銀次～！」
「ホントの事でしょ？」
にんまりと笑う銀次に蛮は怒りをぶつけられなかった。ぐっと力を込めて握った拳がぶるぶると震えている。
「～～～。波児！　ブルマン！」
矛先を変えるかのように勢いのある声でそう叫ぶと、蛮はどっかりとカウンターのいつもの定位置に腰をすえた。
「んじゃ、オレはブレンドで」
「はいよ。蛮は病み上がりなのか？　もう平気なのか？」
「熱が高かったのは昨日までだ。夜には平熱に下がってたから、今は平気だ」
「もう２，３日休まなくていいのか？」
「いや、仕事しねぇと金無いし‥‥」
「ホントにね、お金ないとご飯食べらんないし‥」
うるうると大きな瞳で銀次はじっと波児をみあげた。
「‥‥‥、しょうがねぇ奴らだな。病み上がりだって言うんじゃ、な」
波児は厚切りパンをトースターで焼くとマーガリンを塗って二人の間に置いた。
「おごりだ。古くなってきたパンだからな。さっさと片付けないとまずかった奴だ」
「賞味期限は切れてないのかよ」
「切れてたら出さんよ。そんなモン出して、腹でも壊されちゃ、こっちは大打撃だからな」
言外に、こいつらならその程度じゃ腹も壊さんだろうと思っているのが簡単に読み取れる。が、そんなこと言おうものなら流言蜚語で後の祭りになりかねない。
衛生管理なんのかんので営業停止は勘弁してもらいたい。
トーストをもくもくとほおばる二人の様子を波児はため息を付きながら眺めたのだった。

その後、夏実から聞いた話では、件の占い師は現れていないらしい。
蛮の方も、特に変わった様子もなく、平然としたものだった。夏実は噂の占い師が、蛮だとは知らない。
「兎に角、すご～い占い師ナンんですよぉ。占ってもらった人はみんな当たったらしいですから。占い料が１万でも、安いって思いますよ。だって、たとえ悪い結果に終わることでも、こうすればいいとか、ちゃんとアドバイスしてくれるんですよ。口調がなんか古めかしい感じでしゃべるらしいから、外国の人じゃないかって噂なんですよ～」
「夏実は会った事あんのか？」
「残念ながらないです～。一目みてみたいですけどね」
「何か、占って貰いたい事があるの？」
「いいえ。だって美形だって話ですから、一度くらい見てみたいと思いますよ」
ホンキートンクの店内で繰り広げられる会話は世間話というより、女子高生の間の噂話だ。その噂の主を知る二人としては、どのような情報が飛び交っているのか知りたくて、彼女から詳しく聞いているところだ。
「うわ～、一回で諭吉さんが一人くるんだ～。じゃ、１０人見たらお腹いっぱいご飯食べられるね、蛮ちゃん」
「そんな人数占うのか？　そいつ」
「大抵は２人くらいだそうですよ。しかも順番とか関係ないんだそうです。見たい人や、急を要しているだろう人が自然に優先されているんだそうです。だから、占ってもらえなくっても、まだ急がない事なんだって、みんな納得しちゃうんだそうですよ」
「へ～、普通順番守んなきゃ、誰も占ってくれなんて言わなさそうなんだが‥‥」
「占い師が現れた当初は、そうだったらしいですよ。けど、兎に角的中率が凄いんですよ。そういう噂が広まれば是非にって人は多くなるものでしょ？」
「なるほどな。で、そいつ、いつ頃から現れたんだ？」
「そうですねぇ。噂が流れ出したのが２ヶ月くらい前だから、３ヶ月くらい前かな」
ふ～ん、と対して興味なさそうに蛮は応えた。
（俺の記憶が抜け出した頃と、時期は合うな。一体、誰が乗っ取ってたんだか‥‥）
蛮の予想通りの相手だとすれば、的中率なんてそれこそ１００％以外ないだろう。なんせ相手はまかりなりにも神だから。
こうなれば、真面目に考えないとまずい状況なのは間違いない。蛮＝占い師という図式が広まってしまったら、夏実やレナ、ヘヴンなどは普段の蛮に占えと迫ってくるだろう事が予測できる。
けれど、占い師は蛮ではないのだから、彼と同じような精度を求められても到底無理だ。確かに体自体は蛮なのは間違いないのだが、問題はその中身なのだから。
（さっさと噂が消えることを願って、まめに儀式するしかねぇな）
儀式自体が問題なのではなく、蛮のささげる『モノ』が問題なのだ。
神は大抵、人の感情を糧としている。
だから、一番のささげモノはそういった感情だ。そして、一番良いとされるものが２つある。蛮の場合、その２つのうちのどちらかを選ばねばならなかった。
それ以外のモノでは、彼を守護する神にはささげるには小さいのだ。そして、それを選択して決めたのは、蛮ではなく、マリーアだった。
彼女にしてみれば、それ以外は選択肢に入らなかっただろう。
蛮が選ぶのとするなら、どっちも大差はないと思うのだが。選ばなかった方のが厄介じゃなかった気がする。尤も、それはそれで腹立だしく思うものなので、結局、選択肢ははなっからなかったのだろう。
神にささげる感情───
それは「畏れ」と「快楽」だ。どちらも人間の感情を最大限に引き出すもので性質は両極端にある。
蛮のささげるのは、当然「快楽」の方だ。