日々こもごも
日常や呟き
やっとですよ
連載の続きがやっと打ち込み終わりました。
やっと5ですよ。長くなるかな~とは予想してたけど。
まだまだ核心には迫っていない気が‥‥どんだけぇ~(泣)
ってことでSSはこの下に。
月の誘い5
てんとう虫君にもどってからは会話がなかった。
銀次はマリーアから聞いた話の内容を蛮に確認したいのだが、話すきっかけがうまく掴めない。
情けないなぁ、と思うもののどうやって切り出せばいいのか見当もつかない事も確かだ。
ついつい自己嫌悪から大きなため息をついた。
「なぁに黄昏ているんだよ?」
「何って‥、蛮ちゃんが心配させるからでしょ?」
声をかけてきた蛮に応じながら、このまま聞いてしまえと銀次は運転席へと身体ごと向き直った。
「蛮ちゃん! ごまかさずに説明して! アレは一体どういうこと?」
「アレ? 倒れた事か?」
「違うよ! 公園でやってた事。パチンコ行くなんてごまかしてさ」
問い詰めれば、蛮の方が珍しく不安げに瞳を揺らす。
「あ、あのな? 銀次」
「本当に、ごまかすのは無しだよ?」
「‥‥って、まず聞けよ! あの公園であの時まで、俺は何をしてた?」
必死な感じで訴えてくる蛮はうそをついているようにも見えなかった。そんな余裕すらないような感じでかえって銀次の方が驚く始末だ。
「何って‥‥。どういう意味?」
「‥‥‥俺は‥‥、あの場所で‥何をしていたのか、全く覚えていねぇ」
うつむき小さな声で呟かれた。
「覚えて、ない? 本当に?」
蛮は顔を上げずにこくりと小さく頷いた。
確かにあの時の蛮は別人のようだった。
がらりと違う雰囲気で、それが見知ったものに変わり、銀次さえも振り切るようにあの場から逃げ出した。
その後、てんとう虫のところに現れるまでの間には何かあったのだろうか?倒れるほど疲労するような出来事があったというのだろうか?
蛮しか知らない空白の時間。
銀次はそれを蛮に聞いてみた。
「帰ってくるまでの方は覚えてるの?」
「あ? 公園からてんとう虫までの間のことか?」
「うん。そこも覚えてない?」
「いや、その辺ははっきりと覚えている。全速力で走って‥、気づいたら随分と遠くまで行ってたんで、裏路地をなるべく選んで戻って来たんだ。なんせ、あの服じゃ目立つから‥」
銀次は首をひねった。全速力と言った蛮の言葉にだ。
「蛮ちゃん。普段って全速力で走ったこと、ある?」
「は? 急いでいる時なんて、手抜きで走っちゃいないが? 一体何を言いたいんだ?」
「オレもさ、蛮ちゃんを追いかけて全速力で走ってたんだよ。なのに、蛮ちゃんに置いていかれたんだ」
今度は蛮が首を傾げた。
「一体、それって‥‥」
「とりあえず、そのことは後にして、帰ってくるだけで立てないくらい疲れたの?」
「ああ、って言うか、遠くまで来たって気づいたのもいきなり疲れたって感じで、恥だけど、そこに座り込んじまったんだ。兎に角、そんなとこにいつまでもいるわけには
いかないし、携帯は持ってないし、壁に手をついて何とか帰ったってわけだ」
「ジャンク・キッズとかがいない地域だって良かったよ。無限城の近くでそんなんだったら‥‥」
銀次はほ~っと息をつき、蛮はむっと顔を顰めた。
「で、元の話に戻るが、公園で俺は何をしてたんだ?」
じっと見つめる瞳は真剣そのものだ。
だが、今までの話を総合してみれば、どんな人間だって不安にならない方がおかしいだろう。
「オレが公園に着いたとき、蛮ちゃんは女の子を占っていた。こう、蛮ちゃんの前にカードが浮かんでいて‥‥、蛮ちゃんが何を言ったのかは聞こえなかったけど、女の子は喜んでいたよ。で、蛮ちゃんにお金を渡していた」
「俺が占いをしてた? しかも、カードが浮かんでいた? 何の冗談だよ、そりゃ‥‥」
「だって、そうとしか見えなかったんだもん」
ぷうっとふくれた銀次に蛮は苦笑を零した。そうして、ゆっくりと事の始めから話だした。
「昨日、俺はパチンコに行くって言って店を出た」
「うん」
確かに蛮はそう言って出て行ったのだ。
「店を出た記憶は確かにあるし、どの店に行こうか考えていた事も覚えてる。けど‥、その先がぷっつりと切れてる。次に覚えてるのは公園で人に取り囲まれてた場所だ。銀次が見たって場面だな。で、俺を囲んでいたやつらは口々に『次は自分を‥』って叫んでた。あれは、占ってくれって事か」
銀次はじっと蛮をみつめたままだ。それは言いようの無い威圧感を蛮に与えていた。
「他には、何か覚えてる?」
「他?」
蛮は肩をすくめ、手のひらを上にして上げて見せた。
「‥‥‥。ね、蛮ちゃん。その右腕の力の代償って、何?」
「え? な、何だよ、いきなり‥‥」
蛮がうろたえた。
それだけ銀次の言葉が意外で、核心をついていたのだろう。そして、やはり覚えていないということ自体が蛮からいつもの冷静さを失わせていたのだった。
「昨日ね、蛮ちゃんが寝ちゃった後にね、マリーアさんから電話が掛かってきたんだ」
それを聞くと蛮はちっと舌打ちをした。恐らくそれだけでマリーアの電話での話しの内容が予測できたのだろう。
「ババァは、何て言ってきた?」
「詳しいことは教えてくれなかったけど、蛮ちゃんの今の状態が『代償』のせいだってことと、早いうちに家に来なさいって。すごく急ぐみたいな言い方だった」
「そっか‥‥、そういう、事‥か」
銀次は変わらずに蛮を見つめている。その表情は先ほどまでとは違い、何か言いたいことがあるような躊躇いを含んだものになっていた。
「何か、言いたいことがあるんなら、言えよ」
「っていうか‥、聞きたい。話せない事?」
「何を、聞きたいって? 取り敢えず。言ってみろや」
銀次は少し躊躇った後、意を決して口を開いた。
「蛮ちゃんや、マリーアさんには今の蛮ちゃんの状態が予測できてるみたいだけど、それって、魔女だってことに関係してるの?」
「2択の答えなら、イエスだな。それ以外なら、言いたくねぇ」
「言えないじゃなくて?」
「‥ああ」
蛮はふいっと目をそらすとタバコを取り出し、火を点けた。
これは、蛮が話したくない時の癖だ。
聞いた質問の答えは銀次に言えない事じゃないが話したく無い事らしい。
いい加減そうに見えても、説明するときはきちんと話してくれる。そういう時に蛮はタバコを吸ったりはしない。
そういう境界線は蛮の行動の中ではとてもきっちりとしているのだ。
「っち。しかたねぇな、明日ババァんとこ行って来るから、銀次、おめぇは‥」
「オレも行くからね! マリーアさんだって『おいでなさい』って言ったんだから!!」
留守番を言い渡される前にと、蛮の言葉を遮って叫んだ。
そうしなければ、間違いなく置いていかれる。蛮は銀次を極力、魔女が持つ、『闇』の部分に係わらせないようにしている。
それは、知る必要の無いことと言われてしまえばそれまでかもしれないが、銀次としては、一歩でも二歩でも踏み込んで知りたいと思うのも、確かなことだった。
尤も、話してもらったとしても、理解が及ぶかどうかは、全く別の話だが。
蛮はにらみ付けるようにしてきたが、そんな事で動じるような銀次じゃ無い。
逆に挑戦的に睨み返してくる。そうして、蛮の方が、折れた。ふっと短い息を吐くと、ごく自然に目が逸らされた。
「明日、朝から行くからな。寝坊しやがったら、即おいて行く」
「うん、分かった!」
二人はそのまま毛布の中に潜り込んだ。
月がフロントガラス越しに、そんな二人を煌々と照らしていた。
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この記事へのコメント
わぁーい(>_<)
Re:わぁーい(>_<)
間が一ヶ月も空いていたのを見て自分でもびっくりしてますよ。
次はもっと早くにUPできるようにしたいです。
本日もコメントありがとうございました。