日々こもごも
日常や呟き
まだ眠い
いや~仕事中に何度か落ちそうになりましたよ。眠くって(笑)いや、寝てないですよ?ちゃんと仕事しましたってば。
そんな事はさておきまして、漸く連載四話の打ち込みが終りました。
ssは下にあります~。
「月の誘(いざな)い」
4
蛮を見失った銀次は呆然としていた。
だいたいが同じような身体能力を持っていたはずだ。それがどうだろう。
それとも今まで蛮は銀次にあわせてその持つ能力の限界にセーブをかけてでもいたのだろうか?
「ど、どうしよう。見失っちゃった」
オロオロと周りを見て、ホンキートンクからたいして離れていない場所だと気がついた。
「そっか、蛮ちゃんはてんとう虫くんに戻ってくるはずだから、そこで待ってればいいんだ」
銀次は向かう先を変えて、ホンキートンクへと急いだ。
てんとう虫の荷台を覗けば、そこは銀次が飛び出した時のままだった。
それが意味するところは、蛮がまだ戻っていないということだ。
手に息を吹きかけすり合わせながら、銀次はその場で待った。
待ち始めて30分は過ぎただろうか、細い路地の奥からゆっくりと歩いてくる人影を目に留め、息を殺すようにして、固まった。
こっち向かって来る人影が蛮だとして、銀次の姿を見た途端、逃げ出すのではないかと、そんな考えが頭を掠める。
しかし、人影が誰だかはっきり見てとれる距離になった頃には、銀次の頭の中からは今まで考えていた事全てが消し飛んでいた。
近づいてくるのは間違いなく蛮だ。
が、様子がおかしい。
壁に手をつき、かろうじて身体を支えているようだ。
ゆっくり歩く足元も覚束なく頼りない。酷く消耗してしまっているようだ。
その事実だけでも驚きだ。だいたい意地っ張りの蛮は、どんな状況だって平気なフリをするのだから。
「ば‥‥蛮ちゃん! 大丈夫? 何があったの?」
「う‥っせ‥‥。さわ‥ぐ、な」
銀次は蛮の身体を支えてやりながら心配そうに覗き込んだ。
見てわかるところに傷はない。血の匂いもしない。それらは銀次を少しだけ安心させた。
蛮はてんとう虫の荷台をあけ、トランクの中に突っ込んであった普段の服へと着替えた。
はぁはぁと荒い息は苦しそうで、銀次の眉間にシワを刻ませる。
「べ、別に‥誰かと、やりあった‥わけ、じゃ、ねぇ、よ」
服を着替えるだけで、残っていた体力を使いきったのか、蛮はぐったりとその場に座り込んでしまった。
銀次はへたり込んだ蛮を半ば引きずるようにして、ホンキートンクの中へと連れて行った。着替えに時間が掛かった所為か蛮の身体はすっかり冷えていた。その上、自力で動ける様子はない。
「波児さあんっ。蛮ちゃんが大変なんです!」
「‥るせっ‥、銀‥‥」
入り口で騒ぐ二人を、波児は見やった。
「どうした?‥‥何があった?」
ただならない二人の雰囲気に波児はカウンターへと身を乗り出す。
「何‥にも‥‥、ねぇ‥、ただ‥疲れ‥た‥だけ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「? 蛮?」
俯いて静かになってしまった蛮を、波児は更に身を乗り出して覗き込む。
「‥寝ちゃってる‥」
唖然とした顔で銀次が応えた。
「疲れただけ、ねぇ。何やった?」
「えーと‥。判りません」
「? 仕事じゃないのか?」
タレて跳ねる銀次に苦笑をすると、波児は奥へと入って行った。直ぐに毛布を持って戻り、それで蛮を包むと抱きかかえる。
そして奥まったボックス席の椅子に寝かせてやった。銀次もその向かいに座りテーブルに肘を着いて顎を乗せた。
それから間もなくカラリとドアに付けられたベルを鳴らして夏実が入ってきたのだった。
「あ、銀ちゃん。お帰りなさい。蛮さん、見つかりましたか?」
「うん、夏実ちゃんはお使いだったの? お帰りなさい」
「はい。マスターが買い忘れたものを買いに行ってました。」
抱えていた紙袋をカウンター内の波児に渡し改めて銀次に向き直った。
「? 銀ちゃん、何かあったの?」
銀次の視線の先を辿り、夏実は向かい席にいる蛮に気がついた。
「あー、蛮さん!怪我でもしたんですか?」
「あ‥、ううん。疲れて寝ちゃっただけ」
夏実の叫びにも蛮は目を覚まさなかった。普段の蛮なら、ドアベルの音で起きてしまうはずなのに、だ。
「よっぽど疲れているんですね。叫んじゃったのに、蛮さんが起きないなんて」
「うん、自力で立てないくらいだったから」
二人は互いに心配と書かれた表情を見合わせた。と、携帯が鳴った。
蛮のスラックスのポケットに入っているそれを、銀次は引き出す。蛮は相変わらず起きる気配はない。
携帯の表記には《マリーア》とあった。
「もしもし、マリーアさん!」
『くすっ、そうよ、銀ちゃん。蛮は、大丈夫‥じゃ、ないわよね?』
今の状況を分かっているらしいマリーアの言葉に銀次は安心を覚えたのだった。
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この記事へのコメント
よっしゃー(>_<)
Re:よっしゃー(>_<)
段々核心に迫っていくつもりです。
ただいまメモは6話めにかかっております。
本日もコメントありがとうございます