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日常や呟き

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なんとか

打ち込みがおわったので早速UPする事にしました~。
下に連載SSあります~。

今日は拍手も入れ替えました。珍しく銀蛮じゃないのも1つあります。
たまにはこういうのもいいかな~と。



月の誘い6

 

都心からてんとう虫で向かった先は、神の記述の折に来た覚えのあるマリーアの家だ。
「カルタスじゃなくいていいの?」
「ああ、あのババァの事だからな」
相変わらずな蛮の素直でない態度に銀次は困ったような笑顔を浮かべるだけにした。何か言えば癇癪を起こすことが容易に想像できてしまうからだ。
(ほんと蛮ちゃんって、マリーアさんが係わることには、子供みたいな行動するんだから)


朝まだ暗いうちから出発してきたからか、家の周りの森の木々もまだ靄でけぶっているような時間に到着した。
しんと静まったままの家は、誰もいないか、まだ家人が寝ている状態のどちらかな感じを銀次に与えた。
「マリーアさん‥‥、いるの?」
「多分な。あいつの腕が確かなことは間違いねぇし‥」
てんとう虫を適当な場所に停めると蛮は躊躇いも無く戸口へと向かった。銀次は慌てて彼の背中を追いかける。
戸口の前に立った蛮は、そのまま戸を開けることをせずに、少し右側にずれた。
「?」
銀次はその蛮の行動に首を傾げつつ蛮の空いた左側、つまり扉の正面に立ったのだった。
手を伸ばして蛮が戸を開ければ、すんなりと開き、それがマリーアが既にここに来ていることを二人へと伝わった。
大きく扉を開ければ、その中から何やら巨大なクッションのようなモノが飛び出してきて、その勢いのままに銀次を押し潰したのだった。
「いらっしゃ~い。よく来たわね~」
ハートマークでも付いていそうなほどの浮かれた声でマリーアは高らかに笑っていた。
「ったく‥‥、こりねぇ奴。ちったぁ学習しろってぇの」
巨大な肉まんクッションに潰されて、ビチビチと跳ねるタレ銀次を見て、蛮は大きくため息を吐いた。

 


「も~、毎回毎回驚くよぉ‥」
「忘れるてめぇが悪いんだろ? だいたいこのババァは人を驚かすのが唯一の生き甲斐みてぇなモンなんだから」
「人聞き悪いわねぇ、蛮ったら‥」
「いでででで‥‥」
リビングでちゃっかりと朝ごはんを頂きながら、そんな会話が繰り広げられた。何気ない、朝の光景。
こうして見ても、銀次からはマリーアと蛮は本当の親子のようにしか思えない。
食事がおわり、お茶を貰ってくつろいでいると、蛮が立ち上がった。
「マリーア、下、借りるな」
「ええ。準備しておいたわよ。ゆっくり行ってらっしゃい」
にこやかな笑顔つきでそう言われ、蛮の頬に朱が散った。銀次は不思議に思いながらも蛮の顔を眺めていると、
「銀次はそこで大人しくしてろ。一時間くらいの事だからな」
「え~っっ。着いてっちゃ駄目なの?」
「大人しく、しとけ!」
拳を握って言う蛮に、銀次はしぶしぶ「は~い」と返事を返したのだった。
それを聞いてから、蛮はリビングを出て行った。
「ホント、意地っ張りなんだから。銀ちゃんにも手伝ってもらえばいいのに、ね?」
「蛮ちゃん、何しに行ったの? ここ最近の蛮ちゃんの行動に関係すること?」
マリーアは手を組むと首を傾げる。
「そうねぇ、蛮が何しに行ったのかは、簡単に言えば儀式のためね」
「儀式?」
「そう。本当は定期的にささげモノをするのよ。自分を守護する神に」
「それをしないと、どうなるの?」
「本人の魔力の大きさや、守護の神様の力によるけれど、いろいろ本人にとって『障』が出るわね」
「それって、オレが手伝えるようなモノなの?」
「人によるけど、蛮の場合なら手伝ってもらった方が早いわよ? 尤もあの子は嫌がるでしょうけどね」
マリーアは何か思い出したのか、くすくすと笑い出した。
「嫌がる? そんな事なの?」
「むか~しね、初めての頃は手伝ってあげたのよ。それがみょ~にトラウマになってるみたいでね」
「蛮ちゃんがするささげモノって、何?」
「ごめんね~、それは流石に私からは教えてあげられないわ。知りたければ蛮に直接聞くことね。教えてくれるかは分からないけれど、ね」
マリーアはすまなそうな表情を浮かべた。銀次にしても彼女を困らせたいわけではないから、問い詰めてまで知ろうとは思わない。
「じゃ、どれ位の時間がかかるの? その儀式って」
「それも人によるけど、蛮の場合なら一時間から二時間ってところかしら。でも、今日はもう少し長いかも知れないわね」
「‥‥、それって、どういうこと?」
「それだけあの子が儀式をサボっていたってことよ。体力しだいでしょうけど、半日以上ってことは無いと思うわ」
「体力次第? 前に見たマリーアさんみたいに踊るとか?」
銀次の頭に浮かんだのは、神の記述の時の魔女の反魂の儀式だった。あの時の蛮の役どころでは体力なんて無くっても関係なかったが、マリーアは場の聖別をするとかで蛮の準備が終わるまでずっと踊っていた。
「まぁ‥‥近いかも、しれないわね」
マリーアは笑顔を見せた。
(蛮ちゃんの‥踊り。ちょっと見たいかも‥‥)
「えっと‥、ちょっと、トイレに~」
銀次はさりげなさを装いつつ席を立った。
「行ってらっしゃい。でも、地下の入り口は結界で閉じてしまっているから、今からじゃ入れないわよ?」
「あう、お見通しですか‥‥‥」
しっかりと見抜かれてしまっていた事にしゅんとうなだれると、銀次は大人しく席に戻った。
「今からじゃ、蛮が自分で出てくるまで何も出来ないわ。パイでも食べて待ってましょうね」
銀次はこくんと頷いた。彼女がそういうのならそうなのだろう。魔術や魔女についての知識の無い自分は素直に待つしか術はないのだ。
「そうそう、蛮の小さい頃の写真が出てきたのよ。銀ちゃん、見たい?」
「蛮ちゃんの、小さい頃?」
「そう、まだドイツにいた頃と、此処に来たばかりの頃のものよ」
「見たいです~」

 


マリーアに写真を見せてもらいながら、小さな頃の蛮の話を聞かせてもらった。
難しそうな本を、眉間にしわを寄せたしかめっ面で読んでいる写真。分からないことが書いてあったのか、頭を抱えてうなっている様子の写真が続いてあった。
いたずらをして怒られた後の写真。顔を真っ赤にして半泣きの顔で怒ってる。
そうした写真を見ながら、写真には無いエピソードも聞いた。
熱を出してマリーアが一晩中看病したこと。
初めての場所に行って、風景を笑顔で眺めていたこと。
笑ったこと、怒ったこと、拗ねたこと。
いろんな表情の蛮。でも、その中に、半泣きはあっても泣いた顔は無かった。
「‥‥、蛮ちゃんって、こんな小さな頃からもう泣けなかったんだね」
銀次の指摘にマリーアは優しい笑顔で微笑んだ。
「ええそうよ。泣いてもどうにもならないって、もうこの頃には諦めてしまっていたの。私が母親代わりになった頃、蛮は心を閉ざしかけていたの。クイーンはそんな彼を見て私に預ける決心をされたのね」
まだ泣いて、わがままを言って、母親を恋しがって、甘えて。そんなことすべてを諦めてしまっていた。
「そうなんだ‥、だから蛮ちゃんって素直じゃないんだ」
「そうかもね。目いっぱい甘やかしてあげたかったのに、結局一度も甘えてはくれなかったわ」
「蛮ちゃんは素直じゃないから、恥ずかしいだけで、きっとマリーアさんの気持ちは伝わってると思うよ」
「銀ちゃんが、そう言うのなら、きっとそうね」
明るい笑みでマリーアは笑う。銀次にはその姿が、自分の中にある『お母さん』というものと同じだと気づいた。
いつの間にか銀次の中に出来上がっていた母親というイメージは彼女そのものだったのだ。
「蛮ちゃん‥‥、遅いなぁ」
ふと時計を見て銀次が呟いた。時計は既に昼を過ぎていることを告げていた。
「まぁ、もうこんな時間なのね。お昼の用意もしてないわ。蛮ももう出てくるはずね」
彼女は慌てて立ち上がるとキッチンへと向かったのだった。
銀次が彼女の行った方向をなんとなく眺めていたら、ドアの外でどさりと重い音がするのを聞いた。
「?」
銀次はなんだろうと首を傾げながら、そっとドアを開ければ、廊下には蛮が倒れていた。
「ばっ‥‥蛮ちゃん!」
悲鳴のような自分の声をどこか遠くに感じながら、銀次は慌てて蛮を抱き起こした。
青い顔色と荒い息。全身は汗をかいているらしく、べたつく感じがした。
「だ、大丈夫?」
身体をゆすられたことで意識がはっきりしてきたのか、蛮は閉じていた目をゆっくりと開けた。
「ん‥‥、ぎ、ん? だい、じょう‥ぶ。‥‥つか、れ、た‥だ‥け」
呟きでそう告げると、億劫そうに目を閉じた。

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気になるよぅ~(ToT)

あの後どうなるのか…、地下室で、どんな事をしていたのか…(T_T)この後がたのしみです(^_^)昨日は残業しなくてすみました、私も(^_^)
  • from katty :
  • URL :
  • 2008/03/16 (07:53) :
  • Edit :
  • Res

Re:気になるよぅ~(ToT)

気になりますか? 伏線いっぱい張りまくりの話になってしまってますね。
裏が入るかは微妙なとこなんですが。

ただいま続きの打ち込みも開始はしてるんです。

残業なくてお互い良かったですね。


本日もコメントありがとうございました

  • from 神成 焔 :
  • 2008/03/17 (02:39)

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