日々こもごも
日常や呟き
あいかわらず(^^;)
今年も大掃除は手の空いてる人間が担当して手分け、なんてことになるのかな。
どうもここ数年、その状態です。仕事してる人間の周りで大掃除が同時進行。笑うしかないね。
ってことで、下に第三話。
「月の誘(いざな)い」
3
ホンキートンクを飛び出した銀次は、すぐ近くに停めてあるてんとうむし君を覗きこんだ。特に荷台部分を、だ。
(あ、やっぱりトランクを開けた跡がある)
慌てていたのか、トランクの隙間から何か布の端がちょろりとはみ出している。鍵も片方しかかけられていない。
つまり、パチンコに行くと言って店を出た蛮は、一度ここへ来て、トランクを開けて、おそらく中に入っていた服に着替え、慌てて何処かに行った、と言うことになる。
一体、何処に行ったのだろう。と考えて、先程の夏実の話しを思い出した。
「‥‥中央公園の近くって、言ってたよね」
銀次は店に戻り、夏実に出かけてくる、とだけ告げて再び走り出した。
「気をつけてね!」
走り去る銀次の背ににこやかな夏実の声がかけられたが、銀次に聞こえたかどうか。
すでに銀次は先を急ぐ事だけに集中していた。
たいした時間をかけずに全速力で公園に辿り着いた銀次は、どこから捜すべきか迷ってしまった。
(ん~、この広い公園のどこかってだけじゃ、捜しようがないよね)
ふと見た先を女子高生らしい数人がいそいそと走っていた。きゃいきゃいと黄色い声ではしゃぎながら楽しげに会話を交わしている。
まるで好きなアイドルのコンサートに出かける時の夏実やレナのようだ。と考えてから、ひょっとして、と閃いた。
彼女達が向かう先に、噂の占い師が居るのではないか。
普段は抜けている銀次でも、蛮の事に関してだけは、感も鋭く頭も冴える。
いそいそと走って行く少女達から少し離れて、銀次は後をついて行った。
結構な人数の人垣の中に、その人物は居た。
濃い青の衣装は風も無いのにも関わらず、ゆらりゆらりとたなびいている。
彼の前には、どういう力が働いているものか、重力を無視して数枚のカードが浮かんでいた。
「結果がでた。そなたの願いは、今のままでは叶わぬ。が、これより一月半、件(くだん)の先輩とやらに勉学を教授して貰えば、二つの願いはどちらもかなう」
「本当に?」
「ウム。2月15日であろう?」
「エ? 嘘! 私、受験日言ってないよ。受ける学校も」
占い師は不思議な笑みを浮かべている。その神秘的な雰囲気がますます占いの内容を真実だと確信を抱かせる。
「良い結果だな」
「は、はい! ありがとうございます。頑張ります!」
占って貰った少女は占料を手渡す。銀次の位置からは金額は判らなかった。
少女の占いが終わった事を知ると、集まった人垣から次々に次は自分を占ってくれという声がかけられた。
「フム‥、本日はこれで終い。時間がない」
彼は、それらの声を気にした風も無く、そう呟く。
「じゃあ、次はいつ? どのあたりに来る?」
そんな声には柔らかな笑顔を答にして、彼はカードと占料をズボンのポケットへと詰め込んだ。
そのまま銀次の居る方に振り向いた。
「ば、蛮、ちゃん? ‥何、やってんの?」
「迎えに、来たのであろう?」
艶やかな笑みを浮かべていたその表情がすうっと変わる。まるで見かけは変わらずに中身だけが代わったかのように。
「‥‥‥‥あ‥‥? ‥銀‥次‥‥‥?」
「蛮ちゃん?」
「あ‥‥っと、話は後だ」
蛮は人垣の輪から軽くジャンプだけで逃れると、まるで逃げるかのように一目散に走り出す。
慌てて銀次も後を追って走り出した。
勿論、集まっていた人々も、何人かは追い掛けてきたが、常人が彼等に付いていけるはずはなく、すぐに諦めて消えていった。
前を走る蛮を銀次は必死に追い掛けた。
本来、二人の身体能力自体にはあまり差がないので、走る蛮に置いていかれた事等ない。
しかし、今前を走る彼の身体能力はいつも以上だった。
いかに銀次でも、助走だけでビルの3階以上へは飛び上がれない。
それをいとも簡単にこなす今の蛮はすでに人外の者だ。
あっという間に銀次も蛮を見失ってしまったのだった。
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気になる~(>_<)